研究概要 |
本研究では,超音波伝播速度を応用して,材齢ゼロからの超若材齢コンクリートの剛性変化を,(1)正確に,(2)非破壊で,(3)連続自動的に測定することができる計測システムを開発し,それら計測結果の評価方法を確立することを目的としている。平成18年度の研究では,計測システムの開発と検証を行い,平成19年度の研究では開発した超音波計測システムを用いた実験を行い,以下のような知見を得た。 若材齢コンクリートの超音波伝播速度Vpと動弾性係数Edの関係については,通常のコンクリートの若材齢時における計測,および石灰石微粉末の添加により意図的に強度を低くした疑似若材齢コンクリート用いて実験を行った。その結果,若材齢コンクリートにおいて(1)Vp-Ed関係はコンクリートの強度水準の影響を受けない,(2)Vp,Edは骨材量の影響を強く受ける,(3)細骨材率はVp-Ed関係に影響を及ぼすがその程度は小さいことを確認した。 水和熱抑制型膨張材を使用したコンクリートを対象とした本計測システムの応用性に関する検討では,(1)非線形アーレニウスプロットによる温度依存性を考慮した強度発現モデルの精度,(2)水和熱膨張材添加量が強度発現モデルに及ぼす影響を実験的に検討した。(1)については,普通コンクリートでは,任意の温度履歴を与えても強度発現モデルは十分な精度を有していることを確認したが,水和熱抑制型膨張コンクリートでは,その特殊な温度依存性のために予測精度が低下することが明らかになった。(2)については,本計測システムが,わずかな膨張材料の変化が強度発現性状に及ぼす影響を鮮明に捉えることができることを確認し,膨張材量の影響を定量化できることを示した。 本研究で開発した超音波計測システムは,若材齢コンクリートの強度発現,剛性変化の評価を精度良く行うことができることから,新たな計測方法として非常に有望であり,今後,様々な目的による応用が期待できる。
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