研究概要 |
近年においては,地球温暖化が産業革命以降における温室効果ガス濃度の急激な増加によって深刻な状況となっている.あらゆる生産活動が環境への配慮を必要とする今日では,基盤施設整備に関してもライフサイクル全般における環境負荷低減が重要である.従来の基盤整備は建設時のコスト最小が問題であったが,今後は200年程度のライフサイクルの中で環境への影響を重視するような橋梁システムが必要である.地球温暖化を軽減するには,建設時のCO_2排出量等の低減のみならず,長寿命化,ミニマムメンテナンス化,リサイクル性の向上等を目指すことが課題であり,本研究では初期投資段階,維持管理段階,廃棄・架替え段階を設定して21世紀における新しい橋梁のあり方について検討を行った.具体的には,3径間,2径間の橋長90m,幅員11.8mの鋼橋10橋,PC橋1種類の上部構造と,RC下部構造に関して試設計を行い,橋梁の寿命を75年,路線の寿命を200年とした際の材料の重量よりCO_2排出量,LCCを算出した.各パラメータを入出力として包絡分析法(DEA)を適用し,解析結果から考察を試みた. 解析結果からは,PC橋の環境負荷が低かったが,鋼橋においてもPC橋の80%程度の効率性を有しており,鋼橋の環境性能が大幅に劣る訳ではないことが判明した.また,リサイクル材の活用,寿命の延長,初期投資の低減等により,PC橋に匹敵するような環境性能の向上も十分期待できる結果が得られた.特に,維持管理段階の防食および寿命の延長は大きな効果を発揮することが分かった.また,径間割に関しても,コストのみならず環境負荷から見ても最適な径間割が存在する可能性を有することが推定された. 以上の結果から,DEAは異なる単位系を有する活動の効率性を効果的に検討出来ることが確認され,「環境に優しい橋梁システム」の方向性を示す基礎的な知見が得られたと思われる.
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