研究概要 |
本研究は,道路ユーザの生体脈波をセンシングし,人間の感覚的な観点からの道路の乗り心地を評価する手法を提案するとともに,道路アセットマネジメントにおける乗り心地指標の利用方法に関する検討を行ったものである.結論を以下に示す. 第一に,道路走行性の違いによる乗り心地実験を実施し,車両走行中の運転者および同乗者の生体脈波のリアプノフ指数によって乗り心地を定量的に把握した結果,車両の速度や道路の線形など、乗り心地に影響する道路の各種要因を抽出することができた. 第二に,乗り心地評価における車両振動の影響を検討するため,車両振動による生体脈波の反応と継続性を分析した.不陸が生じている区間の前後において生体脈波と車両振動を比較した結果,生体脈波が不陸による車両振動に反応することが確認できた.また,生体脈波は安定した状態に戻るまで一定時間を要することが確認できた.このことより,生体脈波は不陸等の直接的な影響ばかりではなく,その後の継続的な乗り心地まで捉えることが可能であり,人間の感覚的な評価を取り入れる方法として有効であることが分かった. 最後に,生体脈波を用いた道路アセットマネジメントの評価指標を提案するために,乗り心地という観点から路線を区別化する方法について検討した.複数の道路区間の乗り心地を検討するために,被験者の生体脈波データから算出した道路評価値(リアプノフ指数の平均値)を比較した.その結果,被験者ごとの道路評価値に規則的な違いが見られ,生体脈波を用いることで路線ごとの乗り心地を相対的に区別することができることが確認できた. 以上の結論から,車両走行中の運転者および同乗者の生体脈波から算出されたリアプノフ指数を用いることで,道路ユーザの乗り心地を定量化することができ,これによる道路マネジメントのための乗り心地評価手法が提案できることが確認できた.
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