研究概要 |
本研究は、鋼構造物の供用中に溶接継手部に発生した疲労き裂をCFRP(炭素繊維強化樹脂)板で補修することによって、この疲労き裂の進展を遅らせる、あるいは、進展を停止させることの可能性について実験的に検討し、鋼構造物に発生した疲労き裂をCFRP板で補修・補強することの可能性、および適用可能な場合の設計、施工上の留意点について考察した。本研究では、溶接継手として疲労き裂の発生が数多く報告されている面外ガセット溶接継手を対象とすることとした。平成18年度は、小型試験片では再現しにくい、残留応力や冶金的性質の変化等を含んだ桁高800mm、支間6,000mmの試験桁を作製し、実構造に発生した疲労き裂の補修にCFRP板を適用することの可能性を調査するため載荷試験を行った。繰返し載荷試験において疲労き裂の発生を確認した継手にはCFRP板を貼付し、その後、き裂が再発生するかどうかを調査した。平成19年度は小型の面外ガセット溶接継手試験片を用いた疲労試験を行い、大型試験体のデータを補った。その結果、(1)小型試験片では、疲労き裂の先端にCFRP板を貼付する補修を行うとCFRP板はまもなく剥離してしまい効果がなかったが、面外ガセットの溶接ビードに密着するように,CFRP板の中央部に矩形の切り込みを入れて貼付する補修方法は、疲労き裂発生後の補修に効果があった、(2)CFRP板の中央部に矩形の切り込みを入れて貼付する補修方法においては、CFRP板の積層数が増えるほど、余寿命が大幅に改善され、積層数を5層とすれば十分な補修効果が得られることが確かめられた、(3)対象とした応力範囲からは疲労限は得られなかった。したがって、き裂の再発生を防止するまでには至らないため、CFRP板の中央部に矩形の切り込みを入れて貼付する補修方法は、延命化のための応急的な対策として位置づけられた、などの成果が得られた。
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