研究概要 |
昨今の社会的情勢を背景に,経済的な道路建設のニーズが高まっている。山岳部が国土の大部分を占有し,平野部は既に人口集中等で要地の制限を受ける我が国では,道路建設の制約条件は厳しいものである。トンネル部とそれを繋ぐ橋梁・土工区間が大半を占めるような道路線形となり,トンネル掘削で生じる土砂の運用は,経済的な道路建設を成し得る上で重要な鍵となる。また,地震や水害の多い我が国では,それらに十分に耐えうる構造物を構築する必要がある。経済性を重視する社会情勢と防災上の観点を満足するには,既存の構造物概念に囚われない構造物の提案,その設計規範の構築が急務である。 そこで,本研究では多ユニットの多連式アーチカルバートに着目し,地震時の挙動の解明およびそれに基づく設計規範の構築を目的とした。具体的には,幅10mの大規模な同じ機能を満たすように設計されたアーチカルバートとボックスカルバートについてレベル2地震動に対する動的解析を行い,両者の耐震安定性を比較検討した。さらに,盛土のみ,シングルプレキャストアーチカルバート,間隔が10m, 5m, 2.5mの3連続プレキャストアーチカルバートの計5ケースを解析対象として,レベル2地震動に対する動的解析を行い,耐震安定性に及ぼすユニット間隔の影響を検討した。 本研究では多連式アーチカルバートに対して,(1)施工過程を考慮した耐震挙動,(2)入力地震波の周波数の変動によるアーチカルバートとボックスカルバートの挙動,(3)地震動に対する安定性,(4)地震後の残留変形,および(5)連続化によるプレキャストアーチカルバートの耐震安定性を解明することができた。
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