研究概要 |
本研究課題の目的は渓流河川に生息する多様な水生生物の生態系保全に配慮して治山ダム,砂防ダム,流路工にどのような魚道が最適であるのかを水理学的に解明することである.以下に研究成果を示す. (1)提案した傾斜隔壁型魚道(V字型溝型魚道)の水理特性および生物調査した結果を発表した。特に,遡上調査結果から,提案したV字溝型魚道は対象河川に生息する遊泳魚ばかりでなく,底生魚,甲殻類が遡上できる落差2.0m,35%勾配を有する魚道であることが評価された. (2)魚道の形状によって出水時に魚道内に侵入する礫の排出状況が大きく異なることを実験によって明らかにし,提案した台形断面魚道の形状が最も礫の排出効果が認められた成果を発表した.現地調査において,実際に施工された提案魚道には20cm以上の巨礫が排出され,魚道プール内で堆積が認められないことを検証した. (3)張り出し型魚道および引き込み型魚道について模型を用いて堰および床固め工下流の流況特性について系統的に検討を加え,流況特性に対する設置位置,魚道幅の影響を明らかにした.また,魚道設置によって不安定でかつ非対称な流況が形成される場合があることを明らかにし,その水理条件を示した.また,不安定かつ非対称な流況の制御方法を提案した. (4)礫の排出機能を有する折り返し魚道を提案した.また,折り返し部に隅角の空間がないように傾斜の側壁部を設けることによって,洪水時の流れにおいて屈曲した回転流が生じやすくなり,折り返し側壁部に作用する圧力が静水圧程度になることを示した.さらに,洪水時において魚道内に輸送された礫が魚道内の流れによって排出されることを明らかにした.
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