研究概要 |
規制緩和を目的とした道路運送法の改正が平成12年5月に成立し,平成14年2月に乗合バス事業は免許制から許可制に移行した.同時に需給調整規制を前提としていた国の地方バス補助制度も,需給調整規制の廃止により平成13年4月から生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた.熊本県では,それらに加えて県単独補助制度を平成19年に改正することを予定している.バス事業を取り巻く環境は,このような制度の変更の影響に加えて,平成の大合併として加速度的に進んでいる市町村合併による地域構造の変化の影響も受けている.本研究では,熊本県下の各市町村の乗合バスを中心とした生活交通対策の取組みへ道路運送法や補助制度の改正,市町村合併が及ぼした影響を分析し,問題点を整理し,役割が増している市町村の地域公共交通政策に関する知見を得た. また,乗合バス事業への規制緩和による定量的な影響分析についても行った.その結果として,各地域における交通網の整備状況,事業者のサービス展開,地理的条件などの地域特性の違いで生産構造に地域差がみられ,これは制度変更に伴う競争圧力の違いによる影響であることが証明された.また,競争圧力の効果に関する分析では,バス事業内からの競争圧力は全地域において,総費用を低減させる方向へ効率的に働きかけていること,他業種からの競争圧力は地域によって違いは見られるが概ね,効率的に働いていたこと,などが明らかになった.
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