研究概要 |
2006年には,「道路運送法の一部改正」によって福祉有償運送の法的位置づけがされた.このことによりNPO等が有償で移動・送迎サービス(以下,移送サービス)を行うことが可能となった.またこれらによって,わが国の移送サービスは大幅に伸び,高齢者や障害者等の移動制約者の移動が確保されることになる. しかし,法的整備の促進や法的位置づけがされても様々な問題を抱えている.それら問題の中に事故等のリスク問題がある.移送サービスの事故には,乗降中の転落事故,車両が衝突した時に車椅子利用者が補助ベルトやアームレストに腹部を強打して内臓を損傷する事故等がある. そこで,本研究では移送サービスに関わるリスクの分析を行うことを目的とし,3つの調査を行った.(1)移送サービスを行う団体・法人,ドライバーにアンケート調査を行い,事故とヒヤリ・ハット内容を明らかにした.(2)知的・精神障害者の移送サービスを行うドライバーにアンケート調査を行い,知的・精神障害者の利用状況,ヒヤリ・ハット内容等を明らかにした.(3)ドライブレコーダーを移送サービスを行う車両に搭載し,運行中の危険挙動の詳細を明らかにした.この3つの調査よりヒヤリ・ハットの種類と対策,事故の種類と対応,危険挙動の種類と要因等より,リスク管理マニュアルの内容を細分化する必要があることが推測された.細分化する項目は,調査結果より[利用者属性],[利用者の有無],[運行ルートの違いによる危険挙動の有無],[ドライバー属性],[状況別]の5項目が得られた.
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