研究概要 |
本研究の目的は,プレストレストコンクリート(以下PCと略記)部材の性能評価型耐火設計法を開発するための基礎研究を行うことである。 平成18年度には,公称径12.7mmの7本よりストランドSWPR7BLの高温下での引張試験を実施し,応カ-ひずみ関係を得た。常温および100℃〜600℃までを100℃刻みで設定温度とした。温度上昇に対する引張強度の低下を,過去に実施されたPC鋼棒の引張試験結果と比較すると,ストランドの強度低下は,300℃と400℃において20ポイント程度下回る。PC鋼棒は,製造過程でマルテンサイト組織が形成されるのに対して,ストランドではパーライト組織が形成される。この違いが高温時における強度低下の差の原因ではないかと考えられる。 平成19年度は,PC鋼棒の高温クリープ試験とPC梁の耐火試験を行った。φ13C種1号SBPR1080/1230PC鋼棒を使用し,次のような2種類の試験を実施した:(1)鋼材の温度を所定の値にまで上げた後に,載荷を行い,荷重を保持,および,(2)載荷を行った後に,温度を所定の値にまで上げ,保持。設定した温度は,常温〜300℃である。試験結果に基づき,時間,温度とクリープひずみの関係をモデル化した。 PC梁の耐火試験では,同一の3体の試験体を作製した。想定された長期荷重を載荷後,ISO834にしたがって加熱した。加熱時間は,30分,60分および終局までと設定した。終局までの加熱では,209分でたわみが過大となり,試験続行が不可能となった。試験の結果,コンクリートかぶり厚さに基づく耐火性能を有していることが示された。さらには,PC梁耐火試験の約3ヶ月後に,30分と60分の加熱を行った梁の常温下における静的曲げ載荷試験を行い,残存耐力を調べた。
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