研究分担者 |
渡邉 史夫 京都大学, 工学研究科, 教授 (50026267)
田中 仁史 京都大学, 防災研究所, 教授 (20132623)
西山 峰広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50183900)
佐藤 裕一 京都大学, 工学研究科, 助教 (20293889)
金尾 伊織 (金尾 伊藤) 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (80372564)
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研究概要 |
兵庫県南部地震以降,構造物の安全性確保だけでなく,地震後の機能維持や補修可能性が重視されている。特に近年の都市型地震の被害から,損傷を修復不要なレベルに低減した擬似無損傷構造物の必要性が明らかになった。しかし建物の応答を弾性範囲に留めたり,免震構造を用いたりすることは経済的に困難な場合があり,擬似無損傷構造物の安価な実現が望まれている。 そこで,波形鋼板をRC架構においてダンパーとして用いるための開発研究を行った。地震時の損傷を修復不要なレベルに抑制した構造物を安価に提供可能な構造形式である復元性の高い圧着型プレキャストプレストレスト構造に,応答低減のためのダンパーを組み合わせた構造形式が挙げられる。本研究ではダンパーに波形鋼板を用いることで,せん断変形に対し高い剛性を示す一方,曲げ剛性および波の進行方向の軸剛性は工学的に無視可能であるという特性を活かし,上下梁の変形状況に関わらず安定したエネルギー消費を行うことが可能なダンパーを開発した。ダンパーの形状は,薄板を用いた波形鋼板の上下に厚い平鋼板を接合したものとし,まずダンパー単体の繰り返し載荷実験を行って,ダンパーの降伏時変形が制御可能であること,および波形鋼板の座屈後も靭性ある挙動を示すことを確認した。次に開発したダンパーを組み込んだ架構の静的載荷実験を行い,RC架構よりもPCaPC架構に組み込んだ場合に効率よくエネルギー消費性能を向上できること,PCaPC架構では損傷を非常に軽微に留め,残留変形はRC架構の1/2程度とできることを確認した。また塑性化した波形鋼板を取り外すことにより残留変形は更に1/2〜1/3に低減できることがわかり,ダンパー交換により容易に建物が継続使用できる可能性も示した。
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