研究概要 |
本研究ではコンピュータシミュレーションと逆問題的手法を併用することにより,既存の圧子力学にも力学モデルにも依存しない全く新しい解析方法の開発に挑戦し,材料の局所的な変形や破壊に関する力学特性を高精度にナノインデンテーション挙動から導出することを目的としている.平成18年度は弾塑性体について,ヤング率,ポアソン比,降伏応力および加工硬化係数が導出できることを見出した.平成19年度はこの解析法を膜/基板2層体に展開した.弾塑性解析までは到達していないが,弾性解析は可能であり,膜のヤング率を高精度の推定できることを明らかにした.これらの結果をまとめて現在論文執筆中である.今後,弾塑性解析と粘弾性解析(一部着手)へと展開する計画である.また,平成18年度「バルブ金属上のプラズマ陽極酸化皮膜作製」に着手し,アルミニウム表面にα-アルミナを含む酸化物皮膜を形成できることを見出し,それがアルミナ焼結体に匹敵する高い硬さを示すことを明らかにした.平成19年度は,チタンをプラズマ陽極酸化することにより,その表面に酸化チタンを形成した.酸化チタンの結晶相はアナターゼとルチルであり,その割合や結晶性を制御して成膜できることを明らかにした.現在,力学特性評価の他に光触媒特性など,新たな機能探索を始めたところである.また,プラズマ陽極酸化による成膜メカニズムがプール・フレンケル効果と電子なだれモデルを考え合わせることで説明できることを明らかにした.
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