研究概要 |
室温から温間域までの大ひずみ加工下で生じる微細粒組織の生成過程と生成機構を明らかにするため,銅,アルミニウム合金,マグネシウム合金に通常の単軸圧縮と我々が開発した多軸多段階圧縮加工(MDF)を施し,その際に現れる変形特性と微視組織の生成過程との関係を系統的に調査した.また,変形誘起微細粒組織の焼きなまし特性を調査し、その熱的安定性を検討した.得られた主な成果は,次のようにまとめられる. 1. 結晶粒内にマイクロシアバンド,キンクバンドなどの変形帯がある臨界ひずみ以上で生じ,その密度とバンド境界間の方位差が変形と共に増加し,結晶粒内を細かく分割することが微細粒組織生成の原因と考えられる.これより,微細粒生成は加工誘起によるその場または動的な連続再結晶が働いて生じる,と結論される. 2. 多軸鍛造では変形帯が三次元空間中に種々の方向に生じ,それらが交差する結果,初期の粗大初期結晶粒が細かく均一に分割される結果,それを元に高ひずみ域で微細粒組織が生成する,いわゆる連続動的再結晶が働くと結論される.これより,多軸鍛造加工法は微細粒組織の生成を促進させる最も有効な大ひずみ加工法であると結論される. 3.変形誘起微細粒組織の生成プロセスは3段階に分けられる.(1)平均粒界間方位差が変形に伴い急増して5°付近で停滞するステージ1,(2)ある臨界ひずみ以降で粒界間方位差が急増するステージ2,(3)高ひずみ域で新粒組織形成が顕著に起こり,粒界間方位差がある飽和値に接近するステージ3,である. 4. 加工誘起微細粒組織の焼きなまし過程では,核生成と新粒成長による通常の不連続再結晶ではなく,回復を伴った粒成長のみの過程,いわゆる静的なその場または連続再結晶,が起こると結論される.
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