研究概要 |
Al合金ダイカスト平板ADC12の超音波顕微鏡観察を行い,破断チル層の分布を観察した.その結果,破断チル層は音響画像中に明確に観察され,破断チル層の初期凝固面に形成される酸化膜は高輝度領域,また破断チル層の本体は低輝度領域として観察されることが分かった.この成果を基に,中央部近傍に破断チル層を内在させた試験片を製作し,引張試験及び疲労試験を実施した.その結果,破断チル層寸法の増大に従って,引張強さ及び疲労寿命は大きく低下していくことが分かった.特に,破断チル層が外部に露出している場合,破断チル層が試験片内部に存在する易合に比べて,引張強さ及び疲労寿命の低下割合が大きいことが明らかとなった.次いで,水袋を用い,引張試験中及び疲労試験中にその場超音波測定を行った.引張試験では,試験中に超音波を試験片内部に伝播させ,内部の破断チル層からの反射波を測定した.その結果,引張試験の途中で破断チル層からの反射波の向きが反転し,破断チル層が母相から剥離してき裂を生じたものと推定された.また,疲労試験では,所定の疲労回数ごとに疲労試験機を停止させ,破断チル層からの反射波を測定した.その結果,疲労試験中に破断チル層からの反射波の向きが反転する場合のあることが分かり,疲労過程中に破断チル層が母相から剥離してき裂を生じると推定された.引張試験中及び疲労試験中に破断チル層が母相から剥離してき裂を生じ,成長していくものと推定された.そこで,最終破断時のき裂寸法から,破壊パラメータを推定した.すなわち,引張試験では,破破断チル層面積から臨界応力拡大係数を評価し,破壊靱性値に近い値を得た.また,疲労試験では,破断面上に最終のき裂寸法を評価して臨界の応力拡大係数幅を求め,その最大値が引張試験で推定された臨界応力拡大係数の値に近い値を示すことを見出した.
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