研究概要 |
次世代のエネルギーとして期待されている水素の利用には水素を高密度かつ安全に貯蔵する水素貯蔵材料の開発が切望されている。そこで水素吸蔵量能力の高い金属(Mg)と水素化能力の高い金属(Ni)を帯電粒子アセンブル法により作製し,その水素吸放出特性を調べた。 まず,ドライ状態でMgとNiが最も帯電する条件を探るために,摩擦帯電の実験を行った。MgとNiのモル比は2:1,3:2となるように2g秤量した。ただし,Niには付着しやすいナノサイズのNiを用いた。その後,アクリルとガラスの2種類の容器にそれぞれの金属粉体を入れ,回転台を60rpmで撹拌,摩擦帯電させ,吸引式ファラデーゲージにより帯電量を測定した。Mgは容器の種類に関係なく,ほとんど帯電しなかった。Niはアクリル容器ではほとんど帯電しなかったが,ガラス容器では4分を最大値とし大きく帯電した。そこで,ガラス容器を用い帯電を行い,Niを被覆したMg試料を作製し,被覆後,遊星ボールミルを用いてNi粒子を固定化した。この試料の水素吸蔵特性を調べたところ,Niの被覆量に大きく依存することが分かった。また,メカニカルアロイング法によりNi粒子にMg金属を被覆させた試料と吸蔵特性を比較すると,Mg-Ni界面の形成が大きくその特性に影響することが分かった。 同様の考えに基づき,液相における粒子の帯電を利用し,液相還元法を用いてTi粒子にNi粒子を被覆した。作製した試料の水素吸蔵量は0.83wt%となり,単体のTiと水素吸蔵量は同じ値となった。水素吸蔵温度は647K,水素放出温度は776Kとなり,単体のTiの場合と比較して水素吸蔵温度,水素放出温度はともに30K低下することに成功した。
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