研究概要 |
本研究では,周波数領域検層法に寄与する孔内モードのストンリー波に着目し,その伝搬特性を基に地下の性状を計測する手法を構築した。 (1)地層境界面の検出法:周波数検層図は,時系列波形を深度順に並べた従来の音波検層図をフーリエ変換を使って周波数領域に変換する簡単な方法で作成することができる。孔内ストンリー波の周波数領域検層図における振幅強度分布は岩盤の種類に応じて特定の周波数範囲に分布する。この性質を利用して境界面の位置を簡単に検出できる。 (2)透水性き裂の検出方法:複数の異なる周波数について求めた振幅の深度分布を荷重平均処理することで透水性き裂の検出する方法を提案し,その検出能力を検討した。荷重を最適化すると,荷重平均後の振幅の深度分布には,透水性き裂の位置が下に凸になり,容易に識別可能になる。 (3)帯状構造体の構造評価と透過係数に現れるモードの特定:き裂を横断したストンリー波の透過係数に現れるオーバーシュートとその振動について傾斜き裂モデルや浸透性破砕帯モデルを用いて,その原因となるモードの特定を行った。ストンリー波が帯状構造体に入射すると,孔内流体の一部が帯状構造体に流入し,それが孔内に逆流する。この逆流がオーバーシュートの原因として有力である。逆流の効果は反射波に似た伝搬特性を有しており,オーバーシュートの振動周期は,孔と交わる帯状構造体の厚さに依存することがわかった。 (1)と(2)で得られた手法は,従来の音波検層データに対しても使うことができ,汎用性の高い方法である。(3)は,ストンリー波の透過係数を用いたき裂の開口幅の評価結果が,実際よりも大きく評価される原因のひとつを明らかにしたことになる。逆流効果のモデル化で新たなき裂評価法の開発が期待できる。
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