研究概要 |
今回、7種のmtDNAは何れも環状構造を示し、ORF157が存在しないことを除いてL. digitata (Ldig)と同じ構成であった。塩基長は、マコンブ(Lj)、ホソメコンブ(Lr)、オニコンブ(Ld)、エナガコンブ(Ll)で37,657bp、リシリコンブ(Lo)で37,656bpで、ミツイシコンブ(La)で37,604bp、アツバコンブ(Lc)で37,500bpであった。本結果よりLaminariaとSaccharina(今回の7種を含む)を識別するための指標としてORF157の有無が考えられが、Ldigと近縁なL. yezoensisでは存在が認められないことから、これが両者を分けるためのマーカーとはなり得ない。 Lj、 Lr、 Ld、 LIでは全領域で塩基の挿入・欠損は無かったが、これらはLoとの間でrps19に1塩基の挿入・欠損が見られた。これらマコンブ系5種間で変異は乏しく、pairwise distance (nad6(partial)-coxl)(:PD parcial)は0.02〜0.11であり、全領域で69サイトに置換、挿入・欠損が検出され、特にtrn、 rps、 ORF、 spacerの幾つかで高い置換率が示された。マコンブ系5種はLaやLcとの間に顕著な変異が見られ、Laとの間のPD partialは4.36〜5.85であった。また、rps19における相同率は、Lj、 La、 Lcの間で95%〜96%であった。マコンブ系5種では種間の遺伝的相違の検出に有用とされるCOIやCOIIIにおいても変異が乏しいことから、既知の見解をふまえてこれらの分類を改めることが必要である。これまで北海道産コンブ属は4系統群に分かれることが知られてきたが、群内の種間の相違を検出することは容易ではなかった。今回の結果から、mtDNAの複数領域の配列比較がそのための有用なツールとなる。 今回、7種について、mtDNAの複数領域から変異を検出し、系統関係を推察することができた。特に、解析が困難とされてきたマコンブ系5種について、"Ljと他4種の間の遺伝的距離が長く表れる"、"Llは、Lr・Lo・Ldと遺伝的に近しい"などの特徴を示す系統樹が得られ、種間関係を調べることができた。これまでの5S spを対象にした解析結果と照らし合わせ、Lr、 Lo、 Ld、 Llの種分化の歴史が浅いことが推察された。
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