研究概要 |
広島大学放射光科学研究センターで開発した真空紫外円二色性(VUVCD)分散計を用い,蛋白質の二次構造解析入の有用性を検討した。 1.変性蛋白質の構造解析:metmyoglobin, thioredoxin, staphylococcal nucleaseの酸・熱・低温変性状態のVUVCDスペクトルを172nmまで測定し,塩酸グアニジン変性状態との比較からこれら変性状態においても多くの二次構造が保持されていることを明らかにした。また,種々の濃度のトリフルオロエタノールとメタノール水溶液中では,70%以上のα-ヘリックが形成されており,アルコール変性は他の変性構造と大きく異なることがわかった。 2.アミノ酸配列レベルでの二次構造予測:30種類のタンパク質のVUVCDから得られたα-ヘリックスとβ-ストランドの含有率と本数をNeural-Network法に組み込むことにより,各二次構造部位の予測精度が大きく改善(75%)できることを見出した。 3.蛋白質・脂質相互作用系の解析:α_1-acid-glycoproteinとリン脂質の相互作用により,α-ヘリックスは11%(2本)から50%(7本)に,β-ストランドは40%(11本)から10%(4本)へと変化し,これらの構造変化は主としてリガンド結合部位で起こっていることを明らかにした。 4.蛋白質・蛋白質相互作用系(アミロイド)の解析:β_2-microglobulinとその2本の断片ペプチド(#21-31・#21-29)のVUVCDスペクトルを175nmまで測定し,アミロイド形成によりβ-シート構造が増加することを明らかにした。現在,R.W.Woody教授(海外研究協力者)とともに,詳細な二次構造の理論解析を行なっている。 以上の結果から,VUVCD分光法が蛋白質の二次構造解析に,新規で詳細な情報をもたらすことがわかった。
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