研究概要 |
リポ酸転移酵素はlipoyl-AMPを基質として,リポ酸依存性のタンパク質にリポ酸を転移する反応を触媒する.その反応機構を明らかにするために,ウシのリポ酸転移酵素(bLT)の結晶構造解析を行った.組換え型bLTには内因性のlipoyl-AMPが結合しており,このことはbLTがlipoyl-AMPに対して非常に高い親和性を持つことを示す.bLT分子はN末端側とC末端側の2つのドメインより成る. lipoyl-AMPはN末端側ドメインの活性中心において,そのリポイル部分は疎水性ポケットの中で疎水結合によって,一方,AMP部分は別のトンネル様空洞中で多くの水素結合を介してbLTと結合する.bLTのlipoyl-AMPに対する親和性はadenylate-binding loopによって補強される.これらの結合によってlipoyl-AMPのカルボニル基の炭素原子はbLT分子の表面に露出する.Lipoyl-AMPのカルボニル基の酸素原子はbLT中に保存されたLys135と相互作用し,それによってカルボニル基の炭素原子の正電荷は強まる.結果的にリポイル化されるべきアポタンパク質のリシン残基の求核攻撃が促進され,カルボニル基とリン酸基の間の結合が切断してリポイル化されたタンパク質が生成する.我々は,ミトコンドリアから精製したリポ酸転移酵素にも又lipoylmononucleotideが結合しており,ミトコンドリア内に移行してきたアポタンパク質を直ちにリポイル化できる状態で待機していることを証明した.
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