研究概要 |
ミクログリア特異的カルシウム結合タンパク質Iba1(Ionized calcium binding adaptor molecule 1)は,活性化ミクログリアで発現上昇する147アミノ酸からなる新規タンパク質である。Iba1は,ホスホリパーゼC-γ(PLCγ)を介した新規Racシグナル伝達系で機能することが現在までに明らかになっているが,同時に,Iba1がF-アクチンとともに集積することが観察され,Iba1のF-アクチンに対する直接の結合能・架橋能が示された。初年度において,ミクログリア活性化におけるIba1の役割について新たな知見を得るため,ヒトIba1およびマウスIba1のX線結晶解析を行った。その結果Ca^<2+>フリー型ヒトIba1およびCa^<2+>結合型マウスIba1のX線結晶解析に成功し,Iba1のCa^<2+>依存的コンフォメーション変化が,これまで報告されてきたEFハンドタンパク質とは全く異なったものであることを明らかにした。さらに,このコンフォメーション変化によって,Iba1がCa^<2+>依存的に単量体から2量体へと分子会合状態を変化させる可能性を示した。そこで,次年度は,水溶液中においても,IbalがCa^<2+>依存的に2量体を形成するかどうかを確かめるため,様々な化学架橋剤を用いたタンパク質間架橋実験を行った。その結果,Iba1の1部が,有意に,2量体を形成するというデータを得た。さらに,Biacoreシステムを用いて,Iba1とアクチン,あるいは他のターゲット分子との間のCa^<2+>依存的な相互作用について検討したが,2量体形成が,これらのターゲット分子との相互作用に関与しているというデータは,まだ得ていない。また,計算機化学の手法を用いて,Iba1のCa^<2+>依存的コンフォメーション変化を動的に解析することを試みた。
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