研究概要 |
生体内で生じた除去すべき細胞にはアポトーシスが誘導され,食細胞による食食により生体から排除される。また,細菌やウイルス,およびこれらに感染細胞も食細胞の攻撃で排除される。本研究は,1)精巣セルトリ細胞による精子形成貪食が導く精子形成支持機構,2)Toll様受容体の病原微生物排除への役割の解明,そして3)インフルエンザウイルス感染細胞のマクロファージによる貪食の意義の解明を目的として行われ,以下の成果を得た。 1)貪食を行ったセルトリ細胞が産生する精子形成支持因子の解析:ラットセルトリ細胞のプロテオーム解析より精子形成支持因子候補タンパク質を同定した。この分子が貪食依存に遺伝子転写レベルで発現誘導されることを見いだすとともに,セルトリ細胞で選択的に遺伝子欠損させたノックアウトマウスを作成中であり,精子形成進行への役割が解明される。 2)Toll様受容体を介する細菌感染時の細胞性自然免疫調節:マクロファージに貪食された黄色ブドウ球菌は,TLR2-JNK経路の活性化を介して活性酸素産生を抑制し,宿主免疫を逃れて生き延びることを見いだした。これは,宿主免疫系を利用した微生物の生き残り戦略と考えられる。 3)インフルエンザウイルス感染細胞によるマクロファージ活性化因子の産生:ヒトインフルエンザウイルス感染細胞は,アポトーシスに依存して,マクロファージの貪食能を活性化する因子を産生することを見いだした。この因子はタンパク質性であるが,新たなタンパク質合成を必要とせずに作り出されるとわかった。
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