研究課題
基盤研究(C)
細胞は、伸展やずり応力などの機械刺激を感知し応答反応を示す。その過程で、多くの場合、機械刺激に対するセンサーの一つであるMS(機械刺激受容)チャネルが関与していると考えられる。細菌由来のMSチャネルは、細胞膜の膜張力の変化を直接感知している。一方、高等生物のMSチャネルの場合、チャネル単独で膜張力の変化を感知するのではなく、細胞膜裏打ち骨格や骨格関連タンパク質を介して膜伸展を間接的に感知している可能性が指摘されている。本研究では、この作業仮説を、生体1分子計測法を用いて、チャネルを直説的に可視化することにより検証した。観察対象として、我々の研究グループが見出したSAKCAチャネル(膜伸展依存性BKチャネル)を選択し、GFP-タグを付加し培養細胞に導入し発現させた。この細胞を蛍光1分子観察したところ、SAKCA分子には細胞膜上で拡散運動しているものと、ほとんど運動停止しているものが存在することがわかった。また、接着部位とSAKCA分子の同時観察を行ったところ、細胞接着部位上、あるいは、その近傍で、SAKCA分子の運動性が低下していることがわかった。一方、コントロール分子では、SAKCAチャネルのような細胞接着部位特異的な運動性低下は見られなかった。これらの実験結果は、当初の仮説を支持するものであった。停留の機構に関しては、欠損分子を用いた観察などの実験結果から、細胞質ドメイン中の特定配列と他の部分による2つ以上の部位の結合に依存する可能性が示唆された。次の課題は、接着部位で停留しているチャネルが機械刺激に特異的に反応するのか検証することに設定したが、本研究期間では、予備的な検討に終始し、検証にはいたらなかった。現時点では、全容の解明には多くの課題が残っているが、本研究を発展させることにより、機械刺激の感知機構の分子機構の理解を進めることができると確信している。
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