研究課題
基盤研究(C)
生体内にはいろいろな組織に幹細胞が存在しており、それら幹細胞の未分化維持あるいは分化機構にはニッチェが重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。そこで我々は、幹細胞ニッチェにおいて、幹細胞の未分化維持に関わる因子がどのように局所的に活性化されているのかについて、その分子機構を明らかにしていきたいと考えた。ショウジョウバエの系はこのような幹細胞ニッチェに関する研究を進めていく上で非常に魅力的な系を提供してくれる。まず幹細胞及び幹細胞ニッチェを同定できること、そして幹細胞の未分化状態と分化状態を抗体染色などで容易に区別できること。そして何よりも幹細胞のマーキングシステムが可能であり、その未分化状態あるいは分化状態とトレースできることにある。ショウジョウバエの雄生殖幹細胞において、われわれなどがBMP-Smadシグナル、JAK-STATシグナルなどが幹細胞の未分化維持に不可欠な役割をしていることを明らかにしてきたが、まだ不明なことも多く、さらに詳細な解析が必要であった。今回の研究においてBMP-SmadシグナルのリガンドであるDpp/Gbbに関しては幹細胞ニッチェに特異的に局在するものもあるが、そうでないものも多く、リガンドの特異的な局在以外の要因が重要であることが明らかとなった。またJAK-STATシグナルに関しても、従来は生殖幹細胞の維持に必要且つ十分と考えられていたが、実は間接的な作用が生殖幹細胞の維持に不可欠であることを今回はじめて見出すことができた。さらに幹細胞ニッチェという概念をより一般化するために培養細胞の系を用いて、その妥当性を検討した。
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