地球温暖化や早期・多肥栽培等によるイネ登熟期の生育環境不良、即ち、高温と多窒素栄養条件は、乳白化や穂発芽等の玄米品質低下をもたらし、問題となっている。これまで、乳白化の主原因は、光合成同化産物供給量(ソース)と消費量(シンク)の量的アンバランスにあると考えられてきた。しかしながら、その発生メカニズムは十分に解明されておらず、生産現場では、不良条件を回避する対策が取られているに過ぎない。従って、その発生メカニズムを詳細に明らかにすることは、高温など不良環境下での品質低下を防ぐための重要な前提条件である。本研究では、報告者らが開発している穂培養法(イネの穂を糖を含む液体培地で培養し、ソースと生育環境を自由に制御することで登熟過程を単純化して解析できる手法)において、(i)培地に酸性水または抗酸化物質を添加することにより長期間の穂培養を試みた。その結果、0.01%亜硫酸水、5mML-アスコルビン酸、約1.5mMの亜硫酸塩、硫酸塩、硫酸等の添加により、培養2週目以降に見られる培地吸収量低下を抑制できる可能性が示唆された。しかし、長期穂培養法の確立のためには、更なる検証が必要と考えられた。一方、これまでの穂培養法による研究成果より、乳白化にはジベレリン(GA)やα-アミラーゼが関与していると考えられたことから、(ii)圃場条件下において、GAとGA生合成阻害剤処理の影響を調べた。その結果、GA処理は玄米外観品質を著しく低下させ、登熟中の子実においてもα-アミラーゼ活性を上昇させることが明らかになった。本研究条件下では、GA生合成阻害剤処理の効果は明瞭ではなかったものの、今後は、それらの使用濃度や時期、施用方法等を詳細に検討する必要があると考えられた。
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