研究概要 |
転換畑におけるソバ栽培は湿害が発生しやすく,壊滅的被害がもたらされることさえある。転換畑における安定したソバ生産にとって,湿害対策は避けて通れない課題であり,耐湿性品種の育成と湿害を回避(軽減)するための栽培法の確立がまたれる。本研究は,耐湿性品種(系統)の探索,簡便な耐湿性検定法の確立,湿害発生機構の生理・生態的解明を行うとともに,生産現場で容易に導入できる湿害回避(軽減)技術の確立を目的に実施されるものである。 普通ソバ46品種・系統,ダッタンソバ2系統を供試し,耐湿性の品種・系統間差を検定した。その結果,ソバにも耐湿性の品種・系統間差が存在すること,耐湿性の違いは,葉面積の展開と光合成能の両者に起因すること,草丈の測定だけによる耐湿性の簡易検定も可能であることが明らかになった。さらに,幼植物における耐湿性検定結果と子実生産の耐湿性とは密接な関係があることも明らかになった。 生育途中で土壌の過湿条件に遭遇しても,播種時に畝立てをしていると,根の機能を表す出液速度,葉身の窒素含量,単位面積当たり光合成速度の低下が軽減され,子実重の減少程度も少なかった。 過湿条件に遭遇した場合でも,事前に培土を行っておけば不定根への光合成産物の供給が増加し,その発生・成長が促進されて出液速度,葉面積の展開,葉身の窒素含量,単位面積当たり光合成速度が増大し,開花数,受精率,登熟率も増大して子実重が増えた。培土による子実重の増加率は,主茎より分枝で著しかった。 以上より,播種時の畝立てならびに土壌過湿遭遇前の培土が,湿害軽減策として有効であることが明らかになった。
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