研究概要 |
1.微量必須元素の過剰症(Ni)とムギネ酸(MA)分泌の関係 放射性63Niを水耕オオムギにMAと共に投与し、MAによるNi吸収促進が結論された。又、MA投与条件下において59Fe吸収がNiの共存により抑制された。また、63Niの吸収はFeの共存により抑制されなかった。これは、MAとの錯体ではNiのほうが優先的に吸収されることを示した。 2.有害元素(Cd, As, Co)とムギネ酸分泌の関係 水耕オオムギにおいて、ヒ素過剰誘導クロロシスの原因がFe欠乏であることを確認するために、ヒ素過剰植物の水耕培地のFe濃度を上昇させて栽培した。その結果、ヒ素過剰誘導クロロシスが軽減された。ヒ素誘導クロロシスの主因はFe欠乏であると結論された。 3.導管中の微量元素の移行量と添加ムギネ酸の効果 水耕オオムギに、過剰濃度のCu, Zn, Mnを午後の3時間、ムギネ酸の添加又は無添加で吸収させ、その後の導管液中の金属含量を測定した結果、正常植物においてはムギネ酸添加により、導管液へのFeの輸送のみが選択的に増加するが、Mn, Cu, Zn過剰栽培の植物においてMAは導管中のCuとZnの濃度を増加させた。このことは、Cu, Zn過剰植物では、分泌MAはCu, Zn誘導Fe欠乏を激化させることが示された。 4.単離細胞膜による微量元素の吸収の解析 鉄欠オオムギ根より単離した細胞膜小胞によるCdの吸収実験において、Cd吸収はCuやFeの共存により抑制されることが示された。その抑制効果はFeよりもCuの方が高く、それはPM小胞とFeやCuとの親和性に起因すると考えられた。 5.ムギネ酸金属錯体の形態の解析 NMRによる検討の結果Fe^<3+>, Cu^<2+>, Zn^<2+>, Mn^<2+>, Ni^<2+>とムギネ酸の錯体形成時のモル比は1:1であると結論された。また、MAとの親和性の順序はCu^<2+> > Fe^<3+> > Ni^<2+> > Mn^<2+> > Zn^<2+>の順であった。
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