研究概要 |
最近、我々は、Bacillus subtilis由来グルタミン酸脱水素酵素(BsGluDH)のG82KおよびM101S変異酵素が、オキサロ酢酸に対して高い活性を示すことを報告している。本研究では、上記同様にすでに報告しているBsGluDH熱安定化変異酵素Q144Rとこれらの変異部位を組み合わせた、二重化変異酵素を作成して、その基質特異性を検討した。その結果、Q144R/G82KとQ144R/M101Sのオキサロ酢酸に対するKcat埴は、1.99,2.14s^<-1>であり、単置換酵素より、いくぶん低下が認められたが、単置換酵素では見られなかったピルビン酸に対して高い活性(5.73and2.69s^<-1>)を示すようになった。さらに進化分子工学を用いて、kcat値の上昇を試みているが、現在までに、オキサロ酢酸、ピルビン酸共に、活性の上昇した変異酵素は得られていない。 リンゴ酸脱水素酵素(MDH)よりアスパラギン酸脱水素酵素(AspDH)が、発散進化により生じたという仮説を立て、各種リンゴ酸脱水素酵素の、L-アスパラギン酸酸化的脱アミノ活性を示すMDHをスクリーニングした。各種MDHの中で、大腸菌由来のMDHのみが、L-アスパラギン酸の酸化的脱アミノ活性をわずかに示した。37-50℃の範囲では、EcMDHの酸化的脱アミノ活性は、アーキアAspDHより高かったが、アスパラギン酸に対する親和性はAfAspDHよりかなり低くなった。そこで、EcMDHのAspDH反応性を改善するために、MOEの分子動力学計算を用いて、活性中心近傍のループ部分の変異酵素を種々設計した(N119S,N119A,A80P,P83V,G84V,D86G,R87G,S222G,V213F,V214F,E215D,E215R)。これらの変異酵素の中で、E215DとE215Rが、野生型酵素のアスパラギン酸酸化的脱アミノ活性よりかなり高い活性を示した。しかしながら、これらの変異酵素は、いずれも、L-アスパラギン酸合成活性、すなわちオキサロ酢酸の還元的アミノ化活性をまったく示さなかった。
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