研究概要 |
二カ年の研究期間において,テルペノイド生合成に関与する生合成酵素を混合したカクテルを調製し,試験管1本で炭素数2個の酢酸から炭素数20個の多環性テルペノイド化合物の酵素的合成に成功した.出発原料に高純度の[U-13C_2]酢酸ナトリウム(標識率99%以上)を用いることにより,natural abundandceの12C元素で希釈を受けることなく,炭素骨格を構成する炭素原子が全てC-13標識された各種テルペノイドを合成することが出来た.酢酸から炭素数15の[U-13C_<15>]ファルネシルニリン酸までの合成では収率54%,炭素数20の[U-13C_20]ゲラニルゲラニルニリン酸までの収率は,27%であった.このように合成した完全C-13標識化合物は,13C-NMRにより微量で炭素骨格構造を解析する測定が可能となり,未解明テルペノイド生合成の解析や機能未知遺伝子の逆遺伝学的解析のための強力なプローブになることが期待できる.また,天然には炭素鎖を規定するプレニルニリン酸合成酵素とテルペノイドの基本骨格を構築する環化酵素の組み合わせで多様なテルペノイドが存在する.テルペノイド化合物の酵素的合成では,酵素的合成に最適化された酵素カクテル中のプレニルニリン酸合成酵素と環化酵素の組み合わせを1〜2種類変更するだけで,多彩なテルペノイドの完全標識体が容易に合成できることが可能である.本研究においては,この酵素カクテルからゲラニルゲラニルニリン酸合成酵素とent-カウレン合成酵素を加えることにより完全C-13標識ent-カウレンの合成に成功した.
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