| 研究概要 |
アミロイドーシス誘発性のヒト型シスタチンをモデルタンパク質として,食原性異常プリオンの伝播を予防し,BSEやvCJDの発症を阻害あるいは抑制できる食品成分を探索し,それらの機能を高めようとする研究を行った。まず,ピキア酵母発現系及び大腸菌発現系によって調製されたヒト型シスタチンを用いて,食品成分由来の種々のペプチド,オリゴ糖,及びポリフェノール類のアミロイド抑制効果について調べた。その結果,朝鮮人参抽出液がヒト型シスタチンに対して抗アミロイド効果を示すことが明らかになった。朝鮮人参ジンセノサイドの糖鎖長及び結合位置についての検討を進めたところ,プロトパナキサトリオール系に属し,糖鎖の1個ついたRg1が特に強い活性を示すことが明らかになった。また,山菜やコーヒー豆に多く含まれているとされるクロロゲン酸にも抗アミロイド効果があることが示された。クロロゲン酸の代謝分解が抗アミロイド効果に及ぼす影響について調べた結果,キナ酸とカフェ酸へと分解が進むにつれて,その効果は徐々に低下してしまうことが明らかになった。このようなインビトロ系での実験に加えて,本研究では,抗アミロイド効果の見られた朝鮮人参ジンセノサイドについては,アミロイドーシス自然発症動物を用いた臨床実験も実施した。すなわち,ハンチントン舞踏病発現遺伝子組換えマウス(FVB/NJ-Tg(YAC72)2511Hay/J,JAX^<[○!R]>Mice,USA)を用いて,朝鮮人参ジンセノサイドの連続経口投与による発症遅延抑制効果を観察した。その結果,このポリフェノールはインビボ系においても発症抑制効果を示す傾向のあることが明らかになった。以上のような知見は,今後,食原性異常プリオンの伝播抑制機能性物質を創製する際の貴重な情報になるものと考えられる。
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