研究課題
基盤研究(C)
浮性卵を産む海産魚類の細胞質の成熟(細胞質の透明化や吸水による卵径の増大)に係わる内分泌機構を解明するとともに、生体外卵子作出方法を開発することを目的で研究を行い、以下の結果を得た。1.ウナギの生体内での卵成熟・排卵に伴う卵母細胞の成熟現象の仔細を明らかにし、これらの現象を生体外で再現することに成功した。この生体外培養法を用いて、卵母細胞の吸水や油球の融合や卵細胞質の透明化等の卵細胞質の成熟は生殖腺刺激ホルモンにより卵濾胞組織で産生される卵成熟誘起ステロイドにより誘導されることが明らかとなった。このような、卵成熟誘起ステロイドによる卵母細胞の吸水には、卵細胞内での何らかのタンパク質が合成されることにより卵母細胞内の卵黄球が分解され、その結果、卵母細胞内の浸透圧が上昇することにより誘起されることが判明した。さらに、このような急激な吸水は卵母細胞や卵黄塊の原形質膜に存在するアクアポリンを介していることがウナギで初めて明らかとなった。これらの卵母細胞の成熟には、IGF-1が関与するが、GAP結合は関与しないことも明らかとなった。また、これらの吸水による卵径の増大は個体毎に進行が異なりこれが卵質に影響を及ぼす可能性が示唆された。2.吸水に必須のアクアポリン遺伝子をクローニングし、部分配列に対するポリクロナール抗体を用いて、免疫組織化学的に検討した結果、アクアポリンは卵黄形成開始時に卵母細胞中に出現し、卵細胞質の成熟に伴って卵黄塊および卵母細胞の原形質膜に存在するようになることが初めて明らかとなり、このアクアポリンがウナギの吸水に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。3.開発した生体外培養法を用いてウナギの成熟排卵を誘起したところ、卵成熟誘起ステロイドにより生体外で12時間後に成熟が、18時間後に排卵が誘起されることが判明し、これに人工授精を行ったが受精卵は得られなかった。今後、培養液などの条件を検討する必要がある。
すべて 2008 2007 2006
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (15件) 図書 (2件)
Journal Experimental Zoology 307A
ページ: 1-18
Journal Experimental Zoology Part A 307
ページ: 324-341
水産総合研究センター研究報告 別冊5号
ページ: 39-44
Comparative Biochemistry and Physiology, Part B 145
ページ: 27-34
Molecular Reproduction and Development 73
ページ: 719-736
Bulletin of Fisheries Research Agency, Special issue No.5
Comparative Biochemistry and Physiology Part B 145
水産総合研究センター研究報告 別冊・5号
Comparative Biochemistry and Physiology,Part B 145