研究概要 |
平成18〜19年度の研究実績は大きく4点にまとめられる。 第1に,長野県浦里村を事例に,同村長宮下周の1920年代から村長時代の30年代にかけての軌跡と言葉を時期別にたどる3本の資料集と,2本の論文をまとめた.その論文の1つでは同村における農村負債整理事業と宮下をはじめ村役場の役割を明らかにした.またもう1つの論文では「宮下における社会主義(の影響)」の検証によって経済更生運動の歴史的位置付けを行うとともに,日本農村の1920年代と30年代の歴史的関連を明らかにした. 第2に,部落会に関する論文をまとめ,「町村-むら」関係の視点からその設立過程を検証することによって部落会設立による戦時下農村の変化の歴史的意義を明らかにした. 第3に,数人の町村長を事例に、明治期の町村制施行から戦時期までの農村自治の歴史を町村長の活動と役割を通して明らかにした論文と,昨年刊行された佐藤信夫『戦争の時代の村おこし』が提起した論点を敷術し深めることによって,経済更生運動から戦時期の農村社会像を再構成するとともに,1930,40年代の農村社会研究の課題と方法を考察した論文をまとめた. 第4に,資料調査と聞き取り調査を積極的に行うとともに,町村長の自伝・評伝等関連資料を系統的に集めることができた.今後の研究の足がかりをつけることができた.調査地だけを挙げると,1950年代半ばまでの行政文書等を整理、借り出した上で全て複写した浦里村調査をはじめ,埼玉県潮止村調査,長野県下諏訪町調査,愛知県安城市調査,京都府雲畑村調査,愛媛県余土村調査,広島県山野村・三和町調査,島根県木次市調査等である.
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