研究概要 |
食品の安全性を保障するために,食品中の生菌数検査が義務づけられている。現在標準的に使用されている平板菌数測定法は,生菌を確実に検出できる方法である反面,測定時間が長い問題がある。本研究では,平板菌数測定法の長所を残しつつ自動的に迅速計測を行うことを目的とした。計測時間の短縮を実現するためには,コロニーの成長過程でより小さいうちに存在の有無を検出することが重要であるため,背景である培地とコロニーとのコントラスト比の向上がポイントとなる。この高コントラスト化の実現には,構成が容易で大きい効果が期待できる暗視野照明法を用い,さらに効果を高めるために偏光による効果と光源の波長帯域の制限を行った。まず,そのための光源光の適切な照射方法,および効果的な偏光方向や波長について検討し,コントラストが高くかつシャーレ全面観測に必要とされる光量ムラの少ない条件について検討した。次に暗視野照明に加えて,効果が認められたP偏光の併用および長波長光使用の各場合について,逐次観測実験を行い生菌数が確定されるまでに要する計測時間の比較検討を行った。 E.coliを用いた実験の結果,暗視野照明を用いることによって通常の明視野照明の場合に比べ,コロニーのコントラスト比を約2〜3倍に向上できることがわかった。また,P偏光および長波長光を暗視野照明と併用することよって,暗視野照明だけの場合に比べてそれぞれ約1.2〜1.3倍および約1.5〜1.8倍に向上できた。さらに逐次観測実験の結果,暗視野照明だけでも従来と比べて計測時間を3時間程度短縮できた。また,P偏光および長波長光併用の効果として,それぞれさらに1時間および30分程度の迅速化がなされた。総合的な効果として,従来の明視野照明で12時間以上要していた計測時間が,本研究によって8時間に短縮することができることが確認され,生菌数検査の迅速化に貢献できることがわかった。
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