研究概要 |
H18年度検討内容(1):様々な濃度のcBiMPSを含むBO-H液に精子を浮遊させ,38.5℃で1〜3時間インキュベートしたところ,0.1mM cBiMPS添加およびインキュベーション3時間が好適で,37%の精子で鞭毛超活性化運動(HA)が誘起された。この結果はcAMPシグナリングを活性化することにより黒毛和種精子で効率的にHAを誘起できることを実証している。 H18年度検討内容(2)と(3):上述の好適条件で処理した精子では少なくとも9種類のタンパク質でcAMP依存的なチロシンリン酸化(pY)反応が認められたが,pYの程度はブタ精子よりかなり低レベルであった。また黒毛和種精子ではcAMP-PKA-SYKシグナリングは検出されなかったが,これとは別にcAMP-FAK様pYタンパク質シグナリングが存在することを指摘した。以上の結果は,黒毛和種精子でのHAがブタ精子とは異なる細胞内シグナリングにより制御されることを示唆している。 H19年度検討内容(1):岐阜県産低繁殖症個体の精子ではcBiMPSに対する反応(HAへの変化途上の運動様式円運動の発現)に明瞭な遅延が見られ,この遅延を調べることで個体の繁殖能力を予測できる可能性を見出した。他方,兵庫県産低繁殖症個体の精子では上述の遅延現象を見出せなかったが,精子の運動保持性が繁殖能力評価法の生物学的指標となりうることを示唆した。 H19年度検討内容(2):高HA精子では105kDaと130kDaのpYタンパク質が対照区(中HA精子)よりも有意に高い強度で検出された。また,94kDapYタンパク質も高HA精子でより強く検出される傾向にあった。つまり,これらのpYタンパク質は繁殖能力評価法の生化学的指標になりうる分子である。なお94kDapYタンパク質は鞭毛主部に分布するFAK様タンパク質として同定した。
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