研究課題
基盤研究(C)
本研究課題では、抗がん剤、特に微小管重合阻害作用を持つビンカアルカロイドのp53スーパーファミリーの機能に及ぼす影響についての新知見を得ることを目的とした。研究代表者は、ビンカアルカロイド類に対する耐性獲得過程において、マウス・メラノーマ細胞株B16F10はβ-チューブリンのアイソタイプ変換を示すことを見いだし、さらに、平常ではB16F10株のクラスIIβ-チューブリン遺伝子発現はp53により抑制されているが、ビンカアルカロイド添加によりp53並びにSp1のDNA結合活性に低下が見られた。18年度はビンカアルカロイドによるp53スーパーファミリー並びにSp1との相互作用を検討するため、これらのタンパク質のin vitro合成系を確立した。すなわち、マウスp53に加え転写活性型p63およびp73、Sp1の全長cDNAをPCRにより増幅した後、pcDNA3.1あるいはpcDNA3.1/V5-Hisへのサブクローニングを行った。これにより、Sp1とp53ファミリーの相互作用並びに抗癌剤暴露下での動態を調べることが可能となった。19年度は、p53欠損マウス由来マクロファージ細胞株C7へのp53ファミリー遺伝子の強制発現系を構築した。さらに、がん治療のターゲットとなり得る肺組織においてp53ファミリーの遺伝子発現をin situハイブリダイゼーションを用いて発現細胞を詳細に検討したところ、気管支上皮細胞並びに二型肺胞細胞において転写活性型p73の強いmRNA発現が観察された。このことから、肺気管支のガン化にはこのがん抑制遺伝子ファミリー分子が関与していることが判明した。
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