研究課題
基盤研究(C)
本研究課題ではウエストナイルウイルス(WNV)感染症の日本への侵入に備えて、フラビウイルスの同一血清型群に属する日本脳炎ウイルス(JEV)とWNV感染症との鑑別診断法を開発するための基礎的研究を行ってきた。平成17年度、WNVとJEVの各中空粒子(SvPs)を抗原として、ELISAやIFA、ウエスタンブロッティング法等の実験室内鑑別診断法を確立した。SvPsは粒子内にウイルス由来の遺伝子を含まないため、安全に取り扱えるため汎用性があるものと考えられた。平成18年度は、フラビウイルス属の感染鑑別に最も有効であるとされるウイルス中和試験について検討した。古典的な中和試験では生ウイルスを使用するため、WNV等の病原体レベル3の病原体の検査はバイオセーフティーレベル3実験室で行わなければならない。また、感染事故が起こる危険性もあるため、より安全なWNVの検査法の開発が求められている。そこで、生ウイルスの代替としてウイルス様粒子(VLP)のウイルス中和試験への使用可能性について検討することを目的に、各種レポーター蛋白質を発現するVLPを作製した。VLPはウイルス構造蛋白質のコーディング領域を欠いたRNA(レプリコン)を内包するウイルス様粒子構造体である。レプリコンとウイルス構造蛋白質を細胞に共発現することにより、培養上清中にVLPが産生される。本研究では蛍光色素や分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子をレプリコンに導入し、これらのレポーター蛋白質が発現するVLPを作製した。また、粒子の殻がWNV(VLP-WNV)あるいはJEV(VLP-JEV)の構造蛋白質で構成されるVLPの作製に成功した。現在、VLP-WNVおよびVLP-JEVを用いて、通常のBSL2実験室で実施可能な中和試験法の開発を行っている。
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