研究概要 |
伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)は,鶏B細胞に感染し,罹患鶏に免疫抑制を惹起する。本病制御のため,これまで多くの研究がなされているが,ウイルス感染による免疫抑制機構や病態発現の分子機構等,基礎獣医学的研究はほとんど進展していない。本研究では,致死性が極めて高い超強毒型IBDVおよび致死性の低い従来型IBDV病原株を用い, IBDVの分子病態発現機構解明を目的に,1) in vitroモデルとしての鶏B細胞由来LSCC-DT40(DT40)細胞の有用性検討,2) IBDV非構造タンパク質の単独発現による細胞障害性および細胞内局在に関する検討,3)マイクロアレイを用いた超強毒型および従来型病原株感染細胞における遺伝子発現動態の比較・解析および,4) IBDV感染感受性細胞から抵抗性細胞を確立し,その遺伝子発現動態をマイクロアレイにより解析した。IBDV病原株は線維芽細胞などでは,連続継代による馴化無しには増殖しない。一方, DT40細胞では病原株が容易に増殖し,実験モデルとして有用であることが明らかとなった。強毒型および従来型病原株をDT40細胞に接種し,感染後の遺伝子発現動態をマイクロアレイ解析により検討した。170遺伝子にIBDV感染後に著明な発現変動が認められ,用いた株の病原性により動態の異なる遺伝子の存在が明らかになった。さらに, DT40細胞からIBDV感染抵抗性細胞を確立し,感受性細胞と発現動態の異なる遺伝子を明らかにした。次に,致死的および非致死的病原株のウイルスタンパク質を細胞内で単独発現させ,宿主細胞に与える影響を解析したところ,病原性とは無関係と考えられてきたVP4がIBDVの細胞障害性に関与する可能性が示された。また, IBDV感染細胞で発現後細胞膜に移行し細胞傷害との関連が知られるVP5は,膜移行にパルミトイル化の関与することが示唆された。
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