研究概要 |
平成18年度は糖加水分解酵素(β-グルコシダーゼ)を光架橋性樹脂で固定化し、得られた固定化触媒を用いて有機溶媒中で、官能基化されたアルコールやモノテルペンアルコールと無保護のD-グルコースからグリコシド化合物(配糖体)を効率よく合成した。すなわち、平衡論支配下でbenzyl alcohol(1),phenethyl alcohol(2),geraniol(3),nerol(4),(1R)-(-)-myrtenol(5),1,6-hexanediol(6),1,8-octanediol(7)等の一級アルコールを大過剰(D-glucoseに対して約28当量)用い、無保護のD-グルコース(1.1g)と上述した固定化触媒及び水(2mL)の混合物を50度で4日間撹拌後、濾過により固定化触媒を回収し、得られた濾液を直接シリカゲルカラムクロマトに付し、目的とするbenzyl-β-D-gluco-pyranoside(8),phenethyl-β-D-glucopyranoside(9),geranyl-β-D-glucopyranoside(10),neryl-β-D-glucopyrano-side(11),(1R)-(-)-myrtenyl-β-D-glucopyranoside(12),1-hydroxyhexyl-β-D-glucopyranoside(13),1-hydroxy-octyl-β-D-glucopyranoside(14)を効率よく合成した。平成19年度はallyl alcoholとD-glucoseとの酵素的β-グリコシル化を行い、allyl-β-D-glucoside(15)を60%の収率で得た。化合物(15)のアセチル化によって得られたtetraacetate(16)のallyl側鎖の二重結合に対する溝呂木-Heck反応をフェニルホウ酸(PhB(OH)_2)を用いて検討したところ、71%の収率で目的物が得られることが明らかとなったので、更に芳香環に電子供与基及び電子吸引基を有する14種類のフェニルホウ酸誘導体との反応を検討した。得られたアセテートの中、6種類のアセテートを加水分解して天然物(rosin,sachaliside 1,vimalin,citrusin D,icariside H1)を含む6種類のcinnamyl-β-D-glucopyranoside誘導体の合成を行った。更に本反応を二糖よりなるallyl-β-D-glucoside誘導体にも適用するため、allyl-β-D-glucoside(15)より上記誘導体を合成した。化合物(15)の6位水酸基をシリル基で保護し、残った水酸基をbenzoyl基で保護し、続いて脱シリル化して化合物(1)の2,3,4-tribenzoate誘導体(16)を得た。化合物(16)にα-L-arabinopyranosyl bromide誘導体(17)及びα-D-xylopyranosyl bromide誘導体(18)を反応させて目的とする二種類の二糖よりなるallyl-β-D-glucoside誘導体(19,20)を合成した。得られたbenzoates(19,20)に対して溝呂木-Heck反応を検討し、得られた生成物のbenzoyl基を脱保護することによりrosavin(21)を含む三種の天然配糖体の合成を行った。
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