研究概要 |
神経ステロイドは脳内で独自に合成され,種々の膜受容体を介して精神活動へ関与するとともに抗不安・抗ストレス活性を有することから,神経ステロイド自身あるいはその生合成制御物質が新規向精神病薬の有力候補と期待されている.本研究ではそれの開発を究極の目標として,神経ステロイドの高感度・精密分析システムの構築を手始めに,そのストレス,薬物投与による脳内レベル変動を解析した. 得られた成果は次の通りである.1)神経ステロイド解析手法として信頼性に優れるLC-MS/MSを選択し,十分な感度が得られないステロイドに対して種々の誘導体化法を開発した.2)代表的なストレス応答神経ステロイドである5α-還元型プレグナン系神経ステロイドの一斉LC-MS/MS分析法を開発し,epiallopregnanoloneが脳特有の産物であることを見出した.3)ラット脳内3-オキソ-4-エン-ステロイドの一斉分析法を開発し,ストレス負荷に伴うレベル変動がプレグナン系ステロイドとアンドロスタン系のそれでは大きく異なることを発見した.4)ラット脳内アンドロゲンレベルの精密測定法を構築し,拘束ストレス負荷,エタノール投与による変動を解析した.その結果,5α-dihydrotestosteroneが末梢から輸送されたtestosteroneを原料として脳内で独自に合成されることを明らかとした.さらに,GABA_A受容体のモジュレータとされる3α,5α-androstanediolの生理的条件下における脳内レベルも初めて明らかとした.5)代表的なコルチコイドであるcorticosterone及びその還元型代謝物のLC-MS/MS分析法を開発し,それらのラット脳内存否を初めて明らかとするとともに,ストレス負荷に伴う変動や性差に関する重要な知見を得た.
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