研究概要 |
1.EGFRの自己リン酸化部位(Tyr992、Tyr1068、Tyr1148、Tyr1173)のアミノ酸配列を有する5〜7残基のペプチドについて、EGFRの自己リン酸化抑制効果を検討した。自己リン酸化抑制効果を持つものはTyr1068、Tyr1148、Tyr1173をそれぞれ由来とするペプチドAc-VPEYINQ-NH_2、Ac-DYQQD-NH_2、及びAc-ENAEYLR-NH_2であった。これらのペプチド中の、TyrをLeu、Phe、リン酸化チロシン(pTyr)、及びAlaに置換したペプチドについて、自己リン酸化抑制効果を検討した。オリゴペプチドに含まれる芳香環を側鎖に持つアミノ酸残基が、EGFRの自己リン酸ヒ抑制に重要な役割を果たすことが分かった。 2.DYQQDおよびENAEYLRに含まれる酸性アミノ酸(Asp,Glu)を中性アミノ酸(Asn,Gln)に置換したペプチドNYQQNおよびQNAQYLRによるEGFRの自己リン酸化抑制効果はDYQQDおよびENAEYLRに比べて大きく増加した。 3.DYQQD,NYQQN,ENAEYLR,およびQNAQYLRについてドッキングシミュレーション計算を行った結果、DYQQDおよびQNAQYLRはATP競合阻害剤であり、またENAEYLRおよびNYQQNはATP非競合阻害剤であることが示唆された。 4.DYQQD,NYQQN,ENAEYLR,およびQNAQYLRについてEGFRの自己リン酸化抑制効果に対するATP濃度依存性を検討した結果、ドッキングシミュレーション計算の結果を支持する結論を得た。すなわちDYQQDおよびQNAQYLRはATP競合阻害剤であり、またENAEYLRおよびNYQQNはATP非競合阻害剤であると結論した。 5.ATP非競合阻害剤(ENAEYLR,NYQQN)はEGFRに特異的に作用すると期待できる。従って、特にNYQQNは抗がん剤のシード化合物として有望である。 6.今後の展開として、NYQQNを元にしてペプチドミメティックな有機化合物の分子設計を行う予定である。
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