研究概要 |
Flap endonuclease 1(FEN1)は,二本鎖DNAから一本鎖DNAが枝分かれしたブランチ構造(5'flapDNA)を特異的に認識するエンドヌクレアーゼである.FEN1は,DNA複製およびDNA修復において,重要な役割を果たす酵素として知られている.FEN1のヌクレアーゼ活性は,増殖細胞核抗原(Proliferating Cell Nuclear Antigen;PCNA)との相互作用により大きく促進される.ヒトFEN1/PCNA複合体のX線構造解析の結果,FEN1のヌクレアーゼドメインとPCNA結合領域をつなぐアミノ酸配列(-QGST-)がフレキシブルなヒンジ領域がPCNAによるFEN1のヌクレアーゼ活性の促進に関与していることが示唆された.本研究では,このFEN1ヒンジ領域をターゲットにしたタンパク質工学の実験を進め,5'-flap DNA/PCNA/FEN13つの生体高分子間で起こる相互作用を解析した.その結果,以下に示す1.〜3.のことが明らかとなった. 1.ヒンジ領域にフレキシブルな構造をとる-Gly-Ser-で構成される鎖長4(-GSGS-)から10(-GSGSGSGSGS-)残基の配列を導入した数種のFEN1変異体を用いた解析から,各FEN1変異体単独ではそのヌクレアーゼ活性に差は認められなかったものの,PCNAの存在下ではヒンジ鎖長が重要であることが示された. 2.PCNAのリング構造の内側に存在する酸性残基Asp21やGlul7をAlaや塩基性残基のLysに変えた変異体では,ヌクレアーゼ活性はヒンジ鎖長に影響されないことがわかった. 3.すなわち,D21A PCNAは,5'-flap DNA基質上でPCNAが比較的自由な位置を取ることにより,活性型の3者複合体を形成する可能性が示唆された.
|