研究課題
基盤研究(C)
申請者は、大脳皮質におけるGタンパク質共役受容体GPCRの役割を調べるためにGPR56の機能解析を行った。GPR56は前頭頭頂多少脳回症の脳疾患患者からその変異がみつかり、大脳皮質形成においてその関連性が示唆されているオーファンGPCRである。GPR56細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質を調製し、これを抗原として抗体の作製を行った。作製した抗体を用いてGPR56の胎生マウス脳における発現を調べたところ、神経幹細胞が存在する脳質下帯に多く発現することが確認された。また培養神経前駆細胞において、GPR56の過剰発現は遊走を阻害することがわかった。GPR56のシグナル伝達系を調べるために、GPR56過剰発現系とレポーターアッセイを用いた解析を行った結果、GPR56がG12/13およびRhoを介したシグナル伝達を行うこと、またこのシグナルが神経前駆細胞の遊走を阻害することが明らかとなった。さらにGPR56に対する抗体は、GPR56を介したシグナル伝達系を増加させ、神経前駆細胞の遊走阻害効果を促進する機能抗体として作用することがわかった。前頭頭頂多少脳回症という遺伝性疾患との関連から注目されているGPR56の機能として、神経前駆細胞の遊走抑制をin vitroにおいて初めて示し、さらにG12/13およびRhoのシグナル伝達系が神経前駆細胞の遊走制御に関わるということを明らかにした。申請者らは、すでにGqシグナルが神経前駆細胞の遊走制御に関わることを示しているが、異なるGタンパク質シグナルが神経前駆細胞の遊走に関わっていることを示唆することができた。さらに、GPR56抗体が機能抗体として作用することは、GPCRに対する抗体が抗体医薬として有用であることを示す一例として、発展性のある意義ある結果と思われる。
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