研究概要 |
1.興奮性神経伝達物質グルタミン酸の受容体の一種であるNMDA受容体は学習・運動などの神経可塑性の中心的役割を担っている。一方その過剰興奮により神経細胞死をもたらす。従って、NMDA受容体のチャネルブロッカーは抗けいれん薬や神経保護薬としての医療応用が期待できる。今回、ポリアミン誘導体であるアントラキノンポリアミンとアントラセンポリアミンがNMDA受容体の強いチャネルブロッカーであること、及び、両チャネルブロッカーが、チャネルの細胞質側に深く入り込んでチャネルをブロックする新規な作用部位を有するNMDA受容体チャネルブロッカーであることを見出した。 2.大腸菌の酸性条件における細胞増殖に重要な役割を果たす、カダベリン-リジンアンチポーターCadBの基質認識部位を同定した。酸性、芳香族アミノ酸残基の他、リジンのカルボキシル基を認識するアルギニン残基及び活性発現に必須なCys370残基を同定した。これらのアミノ酸残基は主として膜貫通領域と細胞質側に存在しており、基質結合部位を構成する膜貫通領域は第II,III,IV,VI,VII,X,XI及びXII膜貫通部位であると考えられた。 3.酵母のポリアミン輸送について検討し、細胞膜に存在する尿素輸送蛋白質DUR3とS-adenosylmethionine輸送蛋白質SAM3がポリアミンに特異性の高い輸送蛋白質であることを見出した。両遺伝子の欠損により、ポリアミン輸送活性が著しく低下し、ポリアミン生合成欠損株のポリアミンによる増殖促進効果がほぼ認められなくなったことから、両輸送系のポリアミン取り込みに対する寄与が大きいことが明らかとなった。また、polyamine transport protein hnase2によりDUR3の活性が調節されることを見出した。
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