研究概要 |
蛋白質生合成開始因子4E(eIF4E)は,mRNAのキャップ構造を選択特異的に認識し他の因子と共にmRNAをリボゾームへ結合させて蛋白質合成を開始させるという重要な働きを担っている.このeIF4Eの機能発現は,内因性eIF4E結合蛋白質(4EBP)により制御されているが、4EBPには3種サブタイプが存在するなどその制御機構は非常に複雑である.本年度の研究では4EBPサブタイプ間の機能の差異及びeIF4Eに対する認識機構をより詳細に解明する目的で、4EBP2のN末端欠損体及びC末端欠損体を作成し、それぞれのeIF4Eへの相互作用の差異を、表面プラズモン共鳴(SPR)により速度論的に検討した。 4EBP2のN末端側より45残基を欠損させた変異体(Nd45BP2)、及びC末端側より31,52残基を欠損させた変異体(Cd31BP2、Cd47BP2)の各遺伝子を作成し、GST融合タンパク質として大腸菌に組み込み発現させた。調製した試料を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により、eIF4Eに対する4EBP2の各欠損体の相互作用の差異について検討を行った。Nd45BP2、Cd31BP2、Cd47BP2をリガンドとして固定化させたセンサーチップに対して、アナライトとしてeIF4E-m7GTP複合体を用いて相互作用を解析した結果、Nd45BP2及びCd3BP2各欠損体は、対照としての完全長4EBPとの比較で優位な差が確認できなかったが、Cd47BP2欠損体においては、eIF4Eとの結合力が明らかに低下した。これらの結果から、4EBP2とeIF4Eとの結合に4EBP2のN末端は影響を及ぼさないが、Cd31BP2とCd47BP2の間の領域(H74-89E領域)が大きく関与し、既に明らかにされているY54-L60領域と共に、4EBP2のH74-E89領域はeIF4Eとの結合に極めて重要であることを示唆した。
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