研究概要 |
がんや脳梗塞,心臓梗塞などの病態と関連があるとされるHIF-1αの強力な阻害作用をもつ天然物manassantin Bの基本的合成法を確立し,これを基盤技術として生物学的研究に必要なツールを世に送り出すことを目的に本研究に着手し,以下の成果を得た. 1)2,5-ジアリール四置換THF骨格のラセミ合成の検討 2,5-ジアリールTHF骨格のラセミ合成法を確立するため,γ-オキシ-α,β-不飽和ケトンへのジアステレオ選択的マイケル付加反応の検討を行った結果,Gilman試薬では収率71%,30:1dr,Gihan試薬にBF_3を添加した条件では収率72%,33:1drの高い選択性でメチル基をアンチ付加させることができた.また,隣接位置への2つ目のメチル基の導入もHMPA存在下,KHMDSを塩基に用いることで収率99%,14:1drの高選択性で導入できた.最後にTHF環を構築し,rel-(2R,3S,4S,5S)-2,5-ジアリール-3,4-ジメチル-THFリグナン骨格を高立体選択的に合成することができた. 2)2,5-ジアリール四置換THF骨格の不斉合成の検討 不斉[2,3]-Wittig転位反応を鍵反応とする不斉合成を検討し,鍵反応となるベンジルエーテルの不斉[2,3]-wittig転位反応を検討した.その結果,外部不斉配位子としてBox-t-Buを用いることで従来エナンチオ選択性の低かったベンジルエーテルの不斉[2,3]-Wittig転位反応が85-100%eeの高い選択性で進行することを見出した.また,標的天然物及びその誘導体の合成へ応用するため,ベンゼン環上の置換基の置換様式の異なる基質を用いて反応の一般性を確認した.今後,不斉合成へと展開するための基礎を築くことができた.
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