研究概要 |
1.TV-XIIa由来ペプチドベクターは,TV-XIIaのアミノ酸配列を有する膜相互作用部位とDNAを静電的相互作用で結合させるリンカー部位(10merのリシン)より構成されている.10merのリシン単独では20-merオリゴヌクレオチド(ODN)を細胞内に導入することが不可能であることから,膜と相互作用するペプチド部位が機能発現において重要な役割を果たしていることが考えられる.そこで,TV-XIIa蛍光ラベル化体を合成し,細胞に対するTV-XIIaの挙動を観察した.TV-XIIa蛍光標識体を細胞に投与し,蛍光観察したところ,非エンドサイトーシス機構で細胞膜を透過していることがわかった.また,TV-XIIa中の3残基のα-aminoisobutyric acid(Aib)残基をすべてアラニンに置換したペプチドを合成し,TV-XIIa中のAib残基の影響を検討したところ,アラニン置換体では膜透過性は弱かった.さらに,ペプチドベクターのDNAリンカー部位(10merのリシン)の長さの影響(4,6,8,10merのリシン体を合成)について検討した.リシン残基数,8,10では20-merODNの細胞内取り込みが認められたが,リシン残基数が少ない,4,6残基ではほとんど細胞内取り込みが認められなかった.これらの結果から,本ペプチドベクターが機能を発揮するためには,膜透過作用を有するTV-XIIaとDNAリンカー部位のリシン数が重要な役割を果たしていることがわかった. 2.Aibとリシン残基のみを用いて両親媒性ヘリックスペプチドを合成し,ODNの細胞内移送を検討した.その結果,エンドサイトーシス機構でODNを細胞内に移送することが示されたが,導入率は既存のベクター(リポフェクタミン)と比較すると顕著に低かった.
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