研究概要 |
アディポネクチンは脂肪細胞から特異的に産生されるタンパク質で,抗動脈硬化活性を持っている。プロテオグリカンはコアタンパク質にグリコサミノクリカン糖鎖が結合した高分子で,動脈硬化進展において鍵となる分子である。本研究では,アディポネクチン処理後の培養ヒト冠動脈血管平滑筋細胞からの産生されるプロテオグリカンを生化学的に分析した。その結果,アディポネクチンは血管平滑筋細胞にデルマタン硫酸プロテオグリカンの小型分子種であるデコリンの産生を誘導することを明らかにした。さらに,アディポネクチンによる調節は,デコリン分子中の糖鎖のグルクロン酸のエピマー化を減少させていた。本研究で,血管平滑筋細胞のプロテオグリカン合成のアディポネクチンによる調節を明らかにした最初の報告である。 その他に,TNFαについても血管平滑筋細胞プロテオグリカン産生について検討した。その結果,TNFαはコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの大型分子種バーシカンの合成を促進するが,糖鎖の短縮が生ずることを明らかにした。さらに,動脈硬化症の危険因子として知られているホモシステインについて血管平滑筋細胞プロテオグリカン合成への作用を調べ,アディポネクチンの作用と比較した。その結果,ホモシステインがデルマタン硫酸プロテオグリカンの小型分子種ビグリカン/デコリン画分の合成を阻害すること,そのときにはデルマタン硫酸糖鎖の4-ο-硫酸化が促進されることが分かった(Fujiwara, et. al.,2008)。アディポネクチンならびにTNFαについては現在論文を準備中である。
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