研究概要 |
我々はヒトCYP2E1によって触媒されるキノリン(Q)3位水酸化反応が、励起波長330nm、蛍光波長465nmにおいて高感度に検出可能なことを明らかにしている。本研究では簡便なCYP2E1活性スクリーニング系の構築を目的とし、Q骨格を有する含窒素芳香族類およびその誘導体43化合物についてヒト肝マイクロソーム(HLM)による代謝産物の蛍光強度を調べ、メチルおよびクロル(C1)Q類が高い蛍光強度を示すことを明らかにした。そこでクロル基置換についてCYP分子種選択性への影響を検討した結果、5,7-diClQでは蛍光代謝産物生成活性がHLM中のCYP2E1活性値のみと有意な相関が見られ(R^2=0.93)、検討した化合物の中で最も高い相関が見られた。一方で、5,8-diClQおよび6,8-diClQはCYP3A4活性値に対してのみ有意な相関が見られた。5,7-diClQのHLM並びに発現系CYP2E1による代謝のEadie-Hofstee Plotは、直線型であり、一方、5,8-diC1Qと6,8-diClQのHLM並びに発現系CYP3A4による代謝のEadie-Hofstee Plotは、"つ"の字型となり、CYP3A4においてよく知られているアロステリック的な挙動が見られた。これらの結果は、5,7-diClQがHLMにおいて主にCYP2E1により代謝され、一方で5,8-diClQおよび6,8-diClQがHLMにおいて、主にCYP3A4によって蛍光代謝物を生成することを強く示唆している。 このように同じジクロルQ誘導体であっでも、置換位置の違いによりCYP分子種特異性が変化することが明らかになった。これらの結果は、ヒトCYP2E1の蛍光検出可能な選択的基質の確立のみならず、基質認識機構の解明や、選択的阻害剤の開発などにも応用可能であると考えられる。
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