研究概要 |
1.前年度にギャバペンチンがノルアドレナリン(NA)神経の起始核である青斑核ニューロンでGABA性抑制性シナプス電流(IPSCs)を傷害特異的に抑制することを見出し,神経因性疼痛緩解作用と下行性NA神経活性化との関係を明確にしたが,本年度はさらに,protein kinase A(PKA)阻害剤でIPSCs抑制作用が拮抗されたことから,神経因性疼痛時のPKA持続的活性化がギャバペンチンの作用の前提条件である可能性を示した. 2.過分極で活性化される非選択的陽イオンチャネルであるHCNチャネルの阻害剤であるZD7288を神経因性疼痛の動物モデル(坐骨神経部分結紮によるSeltzerモデル)に脊髄内投与すると熱痛覚過敏や機械アロディニアを緩解した.また,脊髄内投与したZD7288はストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスの機械アロディニアやホルマリン誘発痺痛反応の第2相を抑制した.後根を付した脊髄スライス標本の後角ニューロンで根刺激により単シナプス性興奮性シナプス電流(EPSCs)を誘発した.Seltzerモデルマウスから作製したスライスで,ZD7288はC-線維誘発性EPSCsをA-線維誘発性EPSCsよりも強く抑制した。また,C-線維の入力を受ける後角ニューロンで記録した微小興奮性シナプス電流を多くの例でその頻度を抑制した(現在解析中).従って,HCNチャネルは一次求心性終末で興奮性伝達を促進して神経因性疼痛の維持に関与する可能性が高い. 3.脊髄内にグリシンあるいはグリシントランスポーターサブタイプGlyT1阻害剤のsarcosineやNFPSを投与すると,Seltzerモデルマウスの神経因性疼痛を緩解し,さらに糖尿病性ニコーロパチーの機械アロディニアを緩解した.また,ホルマリン試験の第2相が選択的に抑制された.一方,Seltzerモデルマウスから作製した海馬スライスCA1領域の興奮性シナプス伝達長期増強現象は低レベルに推移するが,NFPSは正常レベルに回復させ,認知機能向上作用も確認された.
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