研究課題
基盤研究(C)
脳を灌流する動脈に関して、脳硬膜を貫通してクモ膜下腔に侵入する部位に注目して、模擬手術(錐体経由S状静脈洞前方到達法)により観察した。内頚動脈では海綿静脈洞を通過する前後で、椎骨動脈では大後頭孔周囲の硬膜を貫通する前後で、それぞれ血管標本を摘出して、組織学的検討を加えた。その結果、椎骨動脈が硬膜を貫通る前後で、その外膜には豊富な小静脈と末梢神経が観察された。従って、硬膜内(クモ膜下腔)を走行する椎骨動脈では、外膜を構成する結合組織の密度が減少するにも関わらず、脊柱管内の硬膜上腔に特徴的な静脈構造がある程度保持されていると解釈された。これらの結果を踏まえて、内頚動脈と椎骨動脈が異なる組織環境を走行する問に、主として血管外膜の構成要素に現れる変化に着目して検討を加えることが、解離性動脈瘤などの病態を理解るために必要と考えられた。また本研究では、手術用顕微鏡に映像記録システムを設置した結果、動画による模擬手術の記録と検討が可能となった。手術用顕微鏡は微小な領域での正確な解剖操作に必須の装置であるが、静止画像で立体的な所見を表現ることには限界がある。立体的な構造を示現するためには動画が極めて有効であり、映像記録システムの導入により臨床解剖学の研究環境は大きく改善した。上記の成果は埼玉医科大学医学部の多くの臨床系教員との共同研究に基づくものであり、また将来の発展にとっての礎石ともなる。2008年3月の第113回日本解剖学会総会、学術集会でのシンポジウム「臨床解剖学から」では、解剖学と臨床医学との相互協力の重要性と、こうしたコラボレーションがもたらす教育(臨床研修を含めた卒前山後教育)への貢献について強調した。
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解剖学雑誌 82巻(Suppl)
ページ: 96-96
脳卒中の外科 (印刷中)
Acta Anatomica Nipponica 82
Clinically Oriented Anatomy 5th ed., Translation eds : (Sato, T, Sakai, T)
解剖学雑誌 82巻(suppl)
Clinical Neuroscience 25巻
ページ: 1320-1324
Clinical Neuroscience 25
臨床解剖研究会記録 7
ページ: 4-5
Surgery for Cerebral Stroke (in press)