研究概要 |
Prostaglandin F_<2α>及びThromboxane A_2の心拍促進効果について,酵素処理によって単離したモルモット洞房結節細胞を用いて解析した.その結果,Prostaglandin F_<2α>及びThromboxaneA_2は,cAMP系以外のセカンドメッセンジャーを介してT型Caチャネルを活性化し,陽性変時作用を示すことを明らかにした. 一方,右心不全モデルラットにおけるL型及びT型Caチャネルのリモデリングについて検討したところ,モノクロタリンによる肺高血圧においては,右心房筋肥大を生じ,T型Caチャネル電流振幅の増大を伴っていた.さらにL型チャネルのmRNA及び蛋白減少とともにL型Caチャネル電流振幅の現象が認められた.このように右心不全化では右心房筋のT型Caチャネルの電気的リモデリングを引き起こすことが示唆された. T型Caチャネルは1988年Hagiwaraらによって刺激伝導系に特異的に発現する電流系として報告され,ペースメーカー電流の一因として注目されたが,電流振幅が小さく不活性化の時間経過が速いことから,その関与は比較的小さいとみなされていた.しかしながら,T型チャネルを選択的に抑制する薬物が徐脈作用を有すること,胎性期あるいは心肥大などの病態モデルではT型Caチャネルが多く発現していることなどが次々と明らかになり,T型チャネルの生理病態的意義が注目されている.本研究は,新たな心拍リズム調節の存在を提唱できるのみならず,種々の生理的あるいは病態生理的状態でのT型チャネルの活性化メカニズムおよびその機能的役割,さらに薬物を用いた心機能調節の開発について,重要な情報を提供している.
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