研究概要 |
近交系マウスのCS系は,周期的制限給餌条件(periodic restricted feeding,RF)下での行動と脳の時計遺伝子発現リズムから,体内時計振動体である視交叉上核(SCN)がRFに同調する.本研究では,CS系のRF同調が,体内時計の摂食刺激によるリセットによるものかどうかを,絶食後に摂食刺激を与えることで,行動リズムおよび脳の時計遺伝子発現が受ける影響を調べることから検討した.実験は統制群としてRFに同調しないC57BL/6J系マウスを用いて比較検討した. 1.福井大学医学部でのマウス生体リズム実験室環境を整えた.マウス行動や遺伝子発現などのサーカディアンリズム測定のための実験器具・装置を整備した.CS系マウスを北海道大学医学部時間生理学分野より分与を受け,福井大学医学部で飼育・繁殖させる体制を整えた. 2.12時間交代の明暗サイクル(LD)下でCS系とC57BL/6J系の自由摂食条件での1日の平均摂食量を測定したところ,両者に有意な差はなかった. 3.恒暗条件(DD)に移行し,DD2日目の特定時刻(4時間毎6時刻)に24時間絶食後に摂食させる絶食後摂食条件を行ったところ,CS系とC57BL/6J系ともに,行動リズムの位相はいずれの時刻においても絶食後摂食により影響を受けなかった. 4.CS系で,絶食後摂食による脳の時計遺伝子発現の影響をin situ hybridization法で調べたところ,SCNでは絶食後摂食による変化はなかったが,大脳皮質などでは発現量が増加した. 5.以上の結果から,CS系のリズムRF同調は,絶食後摂食刺激による体内時計の位相変化によるものではないこと,絶食後の摂食行動特性(摂食量)の違いによるものではないことが示され,摂食刺激に関連する別の要因が関与することが考えられた.SCN外の脳部位の時計遺伝子発現が摂食により増加したことから,これらの部位での時計遺伝子が絶食後の摂食に関する何らかの機能をもつことが考えられた.
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